ある日の午後。
俺は一息入れようと給湯室へ向かった。
給湯室には、すでに御堂がきていた。
コーヒーの香ばしい匂いがふわりと漂う。
御堂も一息入れに来ていたようだった。
何気なく後ろ手で扉を閉めると、御堂はじろりとにらんできた。
「いい加減、機嫌を直してくださいよ」
「……………」
返事はない。相当怒っているようだ。
(まぁ、当然といえば当然のことだが)
御堂の機嫌がすこぶる悪い原因。
それは、今朝にさかのぼる。
カーテンの隙間から差し込む朝陽のまぶしさに目が覚め、重いまぶたを開いた。
「おはよう、佐伯」
隣には、半身を起こした御堂がいた。
最近は別々の仕事をしていたため、こうして朝一緒の時間を過ごすのも久々であった。
少し寝癖のついた髪に、肌蹴たナイトガウンからのぞく白い肌。
なんてことない、見慣れてはいる起きぬけの姿だ。
前髪が目にかかったらしく、鬱陶しげに掻き揚げる。
するとガウンから胸の突起がのぞいた。それだけのことだったが、
一週間近く肌を重ねていない状態の俺にとっては、欲情するには十分だった。
「………………」
返事もせず黙って見つめている俺を、御堂が怪訝そうに見る。
「どうした?」
小首をかしげる御堂に、次の瞬間、唇を重ねていた。
「んんっ……!」
不意をつかれた御堂は、舌の侵入を簡単に許してしまう。
ようやく、抵抗しようと手で俺を押し返してきたが、濃厚なキスで力が入らないのか、その力は弱い。
唇を離す。唾液の糸が、朝陽をうけて銀色に輝き、ぷつりと切れた。
「はぁ……っ、いきなり、何なんだ……。…ちょ、さえ…き!」
御堂の問いには答えず、俺は混乱している御堂に覆いかぶさり、ガウンを剥いた。
ようやく、自分が今おかれている状況を認識できた御堂は、
今度ははっきりと抵抗を始めた。身をよじり、俺から逃げようとする。
「こら、やめろ!」
「いいじゃないですか。時間もありますし」
嘘ではない。まだ家を出る時間まで1時間以上ある。
「そういう問題じゃないだろうっ!少しは私の負担も、」
「できるだけ優しくしますから」
御堂の言葉を遮り、再び唇を塞ぐ。逃げる舌を絡めながら、ぷくりと立つ乳首に愛撫を加えた。
わずかに身体が跳ねる。そのまま下へと手を伸ばし、下着の上から熱膨らむそこをつかんだ。
優しくもみしだくと、こらえきれず御堂の腰が揺れる。あいかわらず、快楽には従順だ。
「う…ぁ……、佐伯っ…そこ、は……」
涙を浮かべて見上げてくる姿は、欲望の炎をさらに燃え上がらせるに十分だった。
「腰、浮かせてください」
しかし、まだ観念していないらしく、御堂は首を横に振って拒否した。
まぁ、そんなに簡単に抱かせてもらえるとは思っていないが。
局部に快感を与え続けながら、俺は耳元で優しく語りかけてみる。
「ねぇ御堂さん」
「……なんだ」
「一週間近く、していないんですよ?俺が恋しくないんですか?」
「…ッ、……恋しくない、わけじゃないが……」
御堂は、湧き上がる快楽で小さく震えていた。耳たぶをざらりと舐める。
「う、く……」
「ここももう、こんなになっているし…」
下着の中へ手を滑り込ませる。直に性器をつかみ、上下に擦った。
「………っ!!」
直接性器に愛撫がくわえられたことで、快感が増したようだ。
下着をずらし擦る動きを早めてみると、御堂はイヤイヤするように首を横に振る。
目じりから涙が零れ落ちていった。一旦手の動きを止め、御堂を見つめて返答を促す。
御堂は頬を赤く染めながらもじもじと内腿を擦っていた。
与え続けられた愛撫がとめられ、焦れているのだろう。
やがて、御堂の口が開いた。
「わかっ…た……」
下着を脱がし、先走りを指に絡ませてゆっくりと後孔にいれ、解す。
時間も限られているし、早く中へ入りたいが、
朝から無理をさせるわけにはいかない。
「あぁっ、…んっ……」
指を増やし、ばらばらに動かしていると、御堂が切なげな表情を浮かべた。
もう、迎える準備も整ったようだ。ズボンと下着を脱ぎ捨て、コンドームをつける。
気が急いているせいかいつもよりもたつきイライラするが、さすがにつけないわけにはいかない。
ようやく装着でき、猛った自身を後孔へあてがう。
「入れるぞ」
「あぁ、早、く……。あぁあ!」
御堂の身体が大きく跳ねる。
解したとはいえ、久しぶりの行為で裡はせまくきつい。
それでも、何度か抜き差しを繰り返すうちに、内壁は段々と柔らかくなっていった。
大きくグラインドしつつ、時間を確認する。
そんなに時間をかけたつもりはなかったが、もうゆっくり楽しんでいる余裕はなかった。
「すまない、御堂」
「え……?」
突然謝罪の言葉をかけられた御堂は戸惑っていたが、すぐにその意味を理解することになる。
「…っ!?さ、え……、やっ!そん、な…激しっ…。ァアッ」
悲鳴のような声が部屋に響いた。
御堂は激しい抽送から生まれる強すぎる快感に翻弄されていた。
結合部からは、爽やかな朝に似合わない淫猥な水音が立つ。
「ァ、ァアッ…、もう、ダメだ、克哉ぁ……もう、イ……!」
御堂の身体がガクガクと震え、締め付けが強くなる。
自分も、もう限界だった。
「いいですよ、イって。俺も、もう……っ!!」
* * *
給湯室には重苦しい空気が流れていた。
御堂は射るような目線をこちらに向けながら、腰をさすっている。
コンドームを使用していたとはいえ、朝から激しくせめてしまったため負担が大きかったようだ。
(さて、どうやって機嫌をなおそうか)
御堂の機嫌を直す算段をしながら、俺はおとなしく給湯室をあとにした。
モドル