ほとんど人がいない夜の社内。御堂は執務室でパソコンに向かっていた。
時計の針が10時ごろを差したとき、ようやく作業が終わった。
ミスがないかどうかのチェックも終え、御堂は帰り支度をして執務室を出た。
明かりはついているとはいえ、社内はがらんとしている。
廊下に響く御堂の靴音くらいしか音らしい音は聞こえない。
「……?」
爪先に何かがぶつかった。蹴り出されてころころ転がっていくその球体は、柘榴の実だった。
何故こんなところに柘榴が?と不思議に思いながらも、御堂はその赤い実を拾いあげた。
柘榴はよく熟れていて、割れ目からは艶々とかがやく紅の果実が顔をのぞかせている。芳醇な強い香りは食欲を刺激した。
だがいくら美味しそうに見えても、落ちていたものであることに変わりはない。
拾い食いはためらわれたが、香りだけは楽しもうかとその柘榴を鼻に近づけたその瞬間。
強烈な眠気が襲いかかり、御堂の意識は暗転した。
「…………」
意識が覚醒していくのにしたがい、御堂はゆっくりと目蓋を開いた。
と同時に、御堂は体に妙な違和感を抱いた。
何か蔓のようなものが四肢にまとわりついているような感覚がする。
確認しようとおそるおそる視線をやった先には、信じられない光景が繰り広げられていた。
「なっ……!?」
驚愕してみひらかれた深紫の瞳に映ったものは、巨大な蔓。
蜘蛛の巣のように広がった蔓は御堂の腕や足をからめて拘束していた。
現実感に欠ける光景だったが、身体が締めつけられている感覚から
それが現実に起こっていることであると認識させられる。
「っ…‥!」
肌が粟立つような感触がした。自分を絡む蔓が服の中へ侵入してきたのだ。
スーツの間からするりと入ってきた蔓は、敏感な胸の飾りにからみつくように這ってくる。
ここはどこなのか、何故こんな目に遭っているのか、という考えなど霧散した。とにかくこの蔓から逃れようともがく。
だがもがけばもがくほど、蔓はまるで逃がすまいとするように四肢への拘束を強めた。
「く……っ」
抵抗できない身体へ、愛撫するように蔓が這い回る。
時間が経つにつれ、その蔓に変化が生じてきた。
蔓の表面にぬめりのある液体がにじみ出てきたのだ。その液体が付着したスーツが溶けていく。
その光景にぞっとしたが、幸か不幸か溶けるのは服のみで、身体に害はないようだ。
液体のぬめりのおかげで四肢への拘束が弱まる。御堂はなんとか拘束から逃れることに成功した。
だが。
「っ……」
自由になった身体は支えを失い、ネットのようになった蔓へ落ちた。
上からは先程まで御堂を拘束していた蔓が触手のように伸びてくる。
逃げようにも今度はぬめりが邪魔をして思うように動けない。あっという間に蔓が身体へ絡みついた。
しかも蔓は御堂の弱い箇所を狙っているように刺激しはじめた。
「ぅ‥ぁ……」
ローションを絡めた指で愛撫されているような感覚に不覚にも甘い声をあげてしまう。
「よ、せ…、やめ‥っ…ぁアっ!」
意思を持っているのか、拒絶の言葉を吐くと蔦はさらに御堂を責め立てた。
すでにむきだしになった性器へ細い蔓が絡み、裏筋や尿道口をくすぐる。
「ふぁ…ァ…んんっ!」
洩れでる喘ぎ声を噛み殺そうとするも叶わず、快楽に濡れた声が空間へひびいた。
蔓と身体がすれる際に生じる卑猥な水音が御堂の耳まで犯していく。
「っ…‥!!」
御堂の身体が硬直した。蔓が双丘を割ってアヌスの周りをねっとりと撫でたのだ。
「いや…だ、‥や…ぁ…」
力なく首を横に振りながら逃れようとする御堂に蔓は容赦なかった。比較的太いそれは一気に御堂を貫いた。
「ぁァアッ……!」
御堂の唇から悲鳴があがる。ひんやりとしたモノがまだ硬い内壁をゆっくりと擦る。
正視に耐えられぬ情景に、御堂は強く目を閉じた。
眉をよせて屈辱に耐えるその表情は凄艶といえるほど艶かしい。
「んぅっ…は、ぁ…」
異物感と圧迫感が御堂の身体へ襲いかかる。屈辱と恐怖と嫌悪で涙が滲んだ。
なんでこんな目に遭わなければならないのだろう。
そんな疑問が再び頭をよぎる。だが、その考えはまたもや打ち消された。
「ぁ、あぁ…ッ!」
蔓の先がある一点をついた瞬間、御堂の身体が弓なりに反った。
乳首や御堂自身への刺激とともにもっとも敏感な部分を突かれ、すさまじく大きな快楽の波が御堂へ押し寄せてくる。
「く、‥はぁ…っっ」
強すぎる快楽に苛まれていても、御堂は唇を噛み締めてあらがっていた。
御堂のほか誰もいないこの空間で快楽の海に溺れきっていないのは、
なけなしの理性が残っているからにすぎない。
だがその理性も御堂の手からこぼれ落ちようとしている。
それでも浅ましく快楽へ溺れるのだけはプライドが許さなかった。
しかし、なかなか堕ちようとしない御堂を嘲笑うかのように、蔓が次なる快楽の攻撃をしかける。
「……?」
突然それまで御堂を襲っていた蔓が離れた。
与えられていた激しい快楽が途絶え、御堂は放心したように身体を投げ出していた。
だがほっとするのもつかの間、細い管のようなモノが尿道口へ伸びていく。
管はそのまま真っ直ぐに御堂自身の中へ入っていった。
「っ!?」
ぞっとするような感覚が身体へ走った。
痛みと共に、今までに感じたことのない快感が与えられる。
その快感が恐ろしくて引き抜きたい衝動に駆られるも、一歩間違ったら怪我をするかもしれなくてできなかった。
「ぅあ、あ、…っ」
意味のない言葉が御堂の唇からこぼれる。
どのくらい時間が経ったのか。御堂はずっと焦らされるように責められ続けていた。
乳首の頂は蔓の先端で執拗につつかれ、尿道を責められている肉棒の先からは
管と孔の隙間から透明な液体がだらだらと溢れていた。
しかし、身体は、それでは足りないと更なる快感を欲している。
「も、ヤ……」
もう限界だった。これ以上焦らされたら狂ってしまう。
そのとき、尿道に侵入していた管が抜かれた。
「ァアッッ!」
抜かれる衝撃だけで御堂はあっけなく達してしまった。
絶頂の余韻でびくびくと震える御堂の中に再び太い蔓が突っ込まれる。
「ひ…ッ、ふ、ぁ…」
裡を掻き回すその動きに、御堂はついに理性を手放した。
それからまたどのくらい時間が経ったのだろうか。御堂は重だるい身体を起こした。
「ん……?」
そこは見慣れた自分のオフィスだった。
溶けたはずのスーツは穴ひとつ開いていない。拾いあげたはずの柘榴もない。
「夢、だったのか……?」
確かに、自分はこのオフィスを出たはずだった。
一体どこからが夢だったのだろうか。
御堂は狐に摘ままれたような気分でオフィスを出た。
「いいものを見せていただきましたよ、御堂孝典さん」
くすくすと笑うその声とオフィスの片隅に落ちていた柘榴へ御堂が気付くことはなかった。