If he could attack…

 

克哉はにやにやと笑みを浮かべながら御堂の胸元へ唇を寄せた。

その時。

「ぐっ……!」

御堂から何かが振り下ろされた。克哉は咄嗟に避けようとしたが、避けきれず強かな痛みが肩に走る。

「チッ……」

それでも狙いが外れていたらしく、御堂は悔しそうに舌打ちした。

その手にはスリムな形のオリーブオイルの瓶が握られている。

再び頭上を目掛けて振り下ろされる腕を掴み、御堂から瓶を奪い取った。

御堂の抵抗に、さすがの克哉もその顔から笑みが消えた。

「この状況でまだ反抗しようとするとはな……」

克哉はそのまま、殺気を含んだ視線をぶつける御堂の腕を床に押さえ付けた。

力任せに押さえ付けられた痛みに、御堂は顔を歪める。

このまま怒りに任せて乱暴に犯してしまおうかとも思ったが、それでは面白くない。

もっと徹底的に自分の置かれている立場を分からせてやる手段はないか。

(そうだ……)

即座に浮かんだアイデアに、克哉は邪悪な笑みを浮かべた。

その笑顔に嫌な予感がしたのか、御堂の身体が抵抗しようともがく。

だがその動きは本多を気にしてか、その抵抗は小さなものだった。

克哉は近くに掛かっていたタオルを取ると、御堂の腕を縛り上げた。

「くそっ……やめろっ!」

「今からあんたの立場がどんなものなのか、ちゃんと分からせてやるよ」

耳元で低く告げると、御堂の顔に怯えの色が走った。

克哉は御堂の腕を片手で押さえ付けたまま、奪い取った瓶の蓋を器用に開けると、

御堂の胸元へオリーブオイルをかけた。

緑色の液体が、御堂の白い肌を飾る。

克哉はその液体を刷り込むように胸や引き締まった腹へ広げる。

そして、オイルでぬめる指を、乳首の周りを円を描くように滑らせた。

「っ…ぁ……」

僅かな刺激のはずなのに、御堂の乳首は克哉の指が円を描く度に固くしこっていく。

「直接触っていないのに、ここはもう立っていますよ。……ほら」

舌の先端で敏感なそこをちろちろと舐めると、御堂の唇の端から甘い吐息が洩れた。

それでも、快楽に溺れまいとするように、紫闇の瞳は憎悪の光を宿して克哉を睨んでいた。

「よ…せ…、ぁ…‥っ」

「よせ?もっと、の間違いだろ?ここもこんなに固くしているじゃないか…」

克哉は、すでに熱を集め立ち上がっている御堂自身を握った。

ゆるゆると扱いてやれば、御堂の腰が淫らにくねる。

「く、ぅ…んっ……」

時折上がる喘ぎ声に官能の色が混ざる。

手の動きを早めてやると、快楽から逃げようとするように身を捩って克哉から離れようとした。

もっともそれは弱々しいもので、克哉の嗜虐心をさらに煽るだけだったが。

「ぁ…ゃ‥やめ……っ!」

限界が近いのか、肉棒のひくつく回数が増す。

腰を揺らすその動きが、克哉の手から逃れようとしてのものなのか、

さらなる快楽を求めようとするものなのだろうか。

やがて、御堂自身が大きく震え、精を迸らせた。

「ふ……ぁ‥はぁ……」

乱れた息を整えようとする御堂を置いて、克哉は立ち上がった。

御堂にちらりと視線を向ければ、吐精後の倦怠感でぐったりと身体を横たえている姿が視界に入る。

恐らく何も考えられないのだろう、克哉がキッチンから去っても御堂は何も言わない。

克哉はリビングのソファーで眠りこけている本多へ近付いた。

薬で寝かしたこともあって、本多はぐっすりと気持ち良さそうに眠っている。

「本多……起きろ」

やや乱暴に揺さぶると、本多はだるそうに目を開けた。

「ん‥克哉……、もう少し……」

再び瞼を閉じようとする本多を揺り動かす。

「ここはお前の家じゃない。起きろ」

その言葉に、漸く本多は起き上がった。

「あ‥そうか、ここ御堂さん家か……。もう帰る時間か?」

まだ寝惚けているようだったが、構わずに克哉は本多を立ち上がらせた。

「いや、お前に俺が御堂さんとどんな風に仲良くなったか教えてやろうと思ってな」

「あ?あぁ……」

本多はまだ克哉の言葉が飲み込めていない様子だ。



そのとき、キッチンから物音が聞こえた。

「何だ?」

本多の訝しげな声が聞こえる。

(気付いたみたいだな……)

恐らく、御堂が出した物音だろう。

あの壁の向こう側にある、本多が近付いてくることに焦っている御堂の姿を想像するだけで、

ぞくりとした快感が克哉の中に沸き上がる。




「なっ……」

キッチンへ入った瞬間、本多は息を飲んだ。

床には緑色と白濁の液体が垂れ、その上にあられもない姿の御堂がいる。

その紫紺の瞳には、怯えと恐怖がはっきりと宿っていた。

「か、克哉…。これは、どういう……」

「見ての通りさ」

「……‥っ」

御堂の顔が屈辱で歪む。

「あのときもこうやって御堂さんを悦ばせたんだ。ねぇ、御堂さん?」

言いながら克哉は御堂自身を揉みしだいた。

「ふぁ……っ」

御堂の唇から官能的な吐息が洩れる。

オリーブオイルを絡めながら扱いてやると、先端から再び蜜が流れ始めた。

「や、やめ‥。ぁ……はっ」

快感に喘ぐ御堂を、本多はただ食い入るように見つめていた。

普段見下したような態度で自分たちに接していた御堂が、こんなに淫らに乱れている。

喉がひりつくような欲望が本多に沸き上がった。

その本多の心を読んだかのように、克哉が本多を唆した。

「…なぁ本多、お前も抱いてみないか?」

 



「うぁ…っ、ん……っ!」

リビングの床、逞しい本多の身体の下で、御堂の細くしなやかな肢体が艶かしく跳ねる。

胸の突起を吸われ、アヌスを指で犯されながら淫らに喘ぐ御堂を、克哉は椅子に座って悠然と眺めていた。

「すげぇ……」

顔を上げ、御堂の顔を間近に見た本多は恍惚とした様子で呟いた。

目元は赤く染まり、白磁の肌は薄紅色が刷かれていて、

それでも本多をきつく睨むその表情はぞっとするくらい妖艶で、本多の劣情をさらに煽る。

「本多、御堂さんは指だけじゃ不満なようだぞ?」

御堂の反抗的な瞳は、克哉の嗜虐心もそそった。

克哉はにやりと笑って本多へそう告げる。

「そうみたいだな。それじゃ…っ」

本多は指を抜くと、舌なめずりしながら自らの猛りきったそれを御堂の後孔へあてがった。

御堂の身体に緊張が走る。

「…!?よせっ、やめろっ!!」

逃げようと身を捩るが、本多の力と体格差には敵わなかった。

「ぅ、ぁああっ――!」

苦痛に満ちた悲鳴がリビングへ響く。

狭い器官を熱く大きな塊にこじ開けられていくその痛みに、

御堂の瞳から涙がこぼれ、透明な雫が頬を伝って落ちた。

「きつ……っ」

圧迫感で息を乱しながらも、本多はゆっくりと中を蹂躙し始めた。

本多のモノが内壁を抉る度、御堂の背がしなる。

その苦痛と屈辱に満ちた顔は、克哉の目を楽しませた。

「はっ…、ッッ!」

本多の先端がある一点を突いたとき、御堂の声音が変化した。

「ここが、いいんですか?」

御堂の変化に気付いた本多は、その一点を何度も突いた。

腰の動きを速めながら赤く色付いた胸の突起に再び舌を絡める。

「んっ…ぁ‥くぅ……」

2ヶ所に与えられる刺激が、御堂の理性の砦を揺るがしていく。

固かった内壁は肉棒に絡まるように吸い付き、収縮を繰り返す動きは本多を悦ばせた。

乳首から唇を離すと、本多は御堂の腰を掴んで強く揺さぶった。

その乱暴な行為ですら、今の御堂の身体は快楽に換えていく。

「御堂さんって、乱暴に扱われるのも好きなんですねぇ…。もしかして、マゾヒスト、なんですか?」

「ちがっ…ぁ…‥」

克哉の愚弄が耳に届いて、御堂は力無く首を横に振って否定の言葉を吐いた。

だが、本多の激しい抽送で、御堂は快楽の海へと引きずり込まれてしまう。

「嫌だ‥っ、い…や……っ」

喘ぎながら、御堂は拒絶の言葉を叫んでいた。

その言葉は、凌辱する本多やその原因を作った克哉に向けられているのか、

それとも敏感に反応してしまう己自身に向けているのか、御堂でさえも分からなくなっていた。

「嘘をつかないで下さいよ、御堂、さん…‥!」

拒絶の言葉が自分に向けられていると解釈した本多は、

彼に似つかわしくない酷薄な笑みを浮かべながら力任せに御堂を責めた。

「ひっ…ぃ…‥、んんっ!!」

強烈な快感で御堂は一気に快楽の絶頂へと登り詰めていく。



御堂の身体が硬直し、そして。

「くぅ……っ、ァアッッ!!」

御堂の身体ががくがくとわななき、白濁した液体が再び御堂の肌を汚した。

「ぐっ……」

内壁の強い収縮で、小さくうめきながら本多も御堂の中へ欲を注ぎ込んだ。

「う、ぁ…ぁ……」

声ともいえないような音を漏らしながら、御堂は身体を床へ預けていた。

萎えた本多自身が抜かれ、ほっとするのも束の間、いつの間にか側にきていた克哉に四つん這いにされた。

腕を戒めていたタオルを外した克哉が御堂に告げる。

「御堂さん、まだ終わりじゃないですよ?なぁ、本多」

「あぁ……」

情欲にまみれた本多の声が後ろから聞こえた。

振り返ってみようとした御堂の顎を、克哉が掴んで無理矢理前を向かせる。

「次は俺も楽しませてもらいますよ」

そう言いながら克哉は前を寛げ、すでに硬度を持った自身を取り出した。

鼻先に突き付けられて顔を背ける御堂だったが、その表情が怯えでひきつった。

後孔に質量を取り戻した本多自身が当てられたのだ。

「やめ…。ぅあぁ…‥っ!」

御堂の制止の声など耳に届かなかったかのように、本多のモノが御堂の中へ再度侵入した。

悲鳴を上げる御堂の口内へ、克哉は無遠慮に自身を捩じ込む。

「んぐ、…ぅ‥う……っ」

息苦しさで吐き出そうとするが、克哉は御堂の後頭部を押さえて逃げられないようにした。

「ほら、しゃぶれよ」

薄笑いを浮かべながら、克哉は御堂の口内を蹂躙していく。

本多に中を抉られ、克哉に口淫を強要され、紫紺の瞳からはぼろぼろと涙がこぼれた。





屈辱と快楽に塗り潰された夜は、まだ明けそうもない。