delusion

 

御堂を部屋に監禁して数日が経過した。

陵辱を重ね、どんなに追い詰めても、決して屈しようとしない御堂に克哉の苛立ちが募っていく。

 

 

「おはようございます、御堂さん」

出社前、自宅のアパートから真っ直ぐ御堂の部屋にきた克哉は、

拘束したまま俯いている御堂に声をかけた。

声をかけられた御堂は、顔を上げて無言で克哉を睨んだ。

監禁して間もない頃は、克哉の姿が視界に入るなり罵詈雑言を浴びせていた御堂だったが、

今ではこうして敵意の眼差しを向けてくるだけである。

「水と食べ物はここに置いておきますから。いい子にしていてくださいね」

克哉は食べ物と水が入った皿を御堂の前に置くと、睨み続ける御堂の顎に手をかけた。

「……触るなっ」

静かに、しかしはっきりと御堂は克哉を拒絶する。


「…本当にあんたは強情だな」

御堂の拒絶に、克哉は不機嫌そうに立ち上がった。

昨夜から弱の振動で御堂を責め続けているバイブを爪先で蹴る。

その衝撃に、御堂の体が小さく跳ねた。

「く…っ……」

苦痛に似た快楽で歪む御堂の顔を見ると、克哉は満足そうに笑みを浮かべた。

このまま放っておこうかとも考えたが、引き続き責め続ければ

さすがに御堂の体力も持たないだろう。

克哉はそう思うと、再びしゃがんでバイブのスイッチを切った。

「では、そろそろ俺は行きますね」

克哉は立ち上がって、バイブのスイッチが切られ

安堵の表情を浮かべた御堂に笑顔を向けた。

「…………」

御堂の返事はない。代わりに憎悪の視線が克哉に向けられた。

 

 


「ただいま戻りました」

克哉は、会社から真っ直ぐ御堂の部屋へきた。電気をつけ、御堂の元へ行く。

「御堂……?」

いつもなら部屋に入った瞬間怒りに満ちた視線が突き刺さるはずだが、御堂はうなだれたままだった。

(どうしたんだ……っ?)

言いようのない不安が克哉を襲う。急いで御堂のところへ行き、御堂の顔を覗き見た。

「何だ……」

御堂は寝息を立てていた。

(眠っているだけか……)

克哉はふぅ、と溜め息をつき、安らいだ御堂の寝顔を見つめた。

その頬には、涙の伝った後が微かに残っていた。その跡を、指で軽くなぞる。

しかし、そうされても御堂は身じろぎひとつしない。熟睡しきってしまっているようだ。

昨夜はずっとバイブのスイッチを入れたままにしておいたのだ。

その間眠ることなどできなかったに違いない。

(……もし)

御堂の寝顔を見つめ続けていた克哉の頭を、不意に恐怖にも似たモノが霞めた。

もし、御堂がこのまま…眠ったように反応しなくなったら。

「ふ、何を馬鹿なことを……」

克哉は一人静かに苦笑した。そんなことが起こるはずがない。

もうすぐこいつは自分の手の中へ堕ちる。

今の状態は、そうなるまでの過程に過ぎない。

克哉は胸の中で、自分自身を強引にそう納得させた。

 

 

自分の中に生じた、微かな迷いに目を背けて……。





モドル